政府や福島県がすすめる早期帰還東京電力福島第一原発事故は、事故以来5年が経過しても、収束の見通しがたっていません。多くの人たちが避難したままです。この春には南相馬市、葛尾村で避難指示が解除されようとしています。これは住民の意思を無視し、早期解除・帰還促進の政策を強引に進めるものです。特に、住宅支援や賠償の打ち切りにより、避難者が貧困に陥ることも懸念されます。
また、福島県内では被ばくに関する悩みや健康に関する不安を語ることもできないという声も聞こえてきます。甲状腺検査などは、福島県外では一部の自治体しか行われていません。リスク・コミュニケーションの名で、放射能は安全とする神話が押し付けられています。山口県避難移住者の会は「原発事故被害者の救済を求める全国運動」に賛同し、国会に対する請願署名を行っています。多くのみなさまのご協力をお願いいたします。目標は100万人!署名の〆切は 2016年8月9日です。
【請願項目】
1.原発事故避難者の無償住宅支援の継続を求めます。
2.住民の意向を無視した、早期の避難指示区域の解除と賠償の打ち切り方針の撤回を求めます。最低限、国際的な勧告に基づく公衆の被ばく限度である年1ミリシーベルトを満たすまで賠償や支援を継続すべきです。
3.福島県内外における健診の充実・拡大と医療費の減免を求めます。このため 「原発事故子ども・被災者支援法」第13条第2項第3項の具体化のための立法措置を求めます。
★署名用紙セットはこちらからダウンロードできます。
http://act48.jp/files/20160316/20160316_shomei.pdf
(郵送ご希望の方は、浅野までご連絡ください。でんわ:090-2942-1364
アドレス:nadjaあっとah.wakwak.com あっとを@に変換してください。)
以下、請願内容についての解説は FoE Japan から引用しました。
Q.原発事故の避難者の住宅支援はどうなるの?
A.避難指示区域外の避難者の無償住宅供与は2017年3月で打ち切られます。
現在、避難者の多くは災害救助法に基づく借り上げ住宅制度(みなし仮設住宅)を利用しています。これは避難者に対して避難先の自治体が、公営住宅を提供したり、民間の賃貸住宅を借り上げて提供するという制度。そのための費用は、最終的には、大部分が国に、そして一部は避難元の自治体が負担します。
福島県の調査によれば、借り上げ住宅制度を利用している避難者は全体の59.2%に上り、多くの人たちが入居期間延長を希望しています。
ところが、国と福島県は、政府指示区域以外の避難者に対して、この支援を2017年3月で終了させる方針を打ち出ししました。母子家庭や、二重生活を強いられ経済的に苦しい家庭にとっては、経済的な圧力で帰還を強いられることにほかなりません。
→請願項目1.原発事故避難者の無償住宅支援の継続を求めます。Q.原発事故避難者の置かれている状況は?
A.避難指示が2017年3月までどんどん解除され、賠償も2018年3月で一律で打ち切られます
2015年6月12日、政府は「居住制限区域」(23,000人)、「避難指示解除準備区域」(31,800人)を、遅くとも2017年3月までに解除する方針を決定しました。対象地区の住民への慰謝料の支払いは2018年3月で一律終了する方針です。
しかし、避難区域内の多くのの住民が「戻らない」、「まだ判断がつかない」としています。上図 住民意向調査の結果 (出典:平成27年3月10日復興庁「復興4年間の現状と課題」)
住民が戻りたくないとしている理由は、福島第一原発の安全性への不安、放射線への不安、医療環境、生活環境、家屋の荒廃、若い世代が帰ってこないなどさまざまです。
政府は、解除の要件として、①空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実であること、②生活インフラが復旧していること、③県、市町村、住民との十分な協議――をあげています。①に関しては、ICRP(国際放射線防護委員会)による勧告、また、原子炉等規制法など日本の国内法令による公衆の年間の線量限度は1ミリシーベルト、放射線管理区域は年5ミリシーベルト相当であること、土壌汚染レベルをまったく考慮していないことなどから、年20ミリシーベルトを避難・帰還の基準とすることは内外から多くの批判の声があがっています。③に関しては、一方的な説明会が行われているだけで、反対意見がどんなに多くてもききいれられていない状況です。
Q.帰還を望んでいる人には、よい話では?
A.住民が帰還するか避難を継続するか、選択できる対応も可能なはずです。
帰還を望んでいる人、避難の継続を希望する人を対立させたり、賠償の打ち切りによって帰還を迫るようなやり方ではなく、線量や土壌汚染の状況に応じて、避難の継続か帰還かを住民が選択できる対応も可能なはずです。
→請願項目2.住民の意向を無視した、早期の避難指示区域の解除と賠償の打ち切り方針の撤回を求めます。最低限、国際的な勧告に基づく公衆の被ばく限度である年1ミリシーベルトを満たすまで賠償や支援を継続すべきです。
Q.健康被害は大丈夫?
A.甲状腺がんが多発していますが、福島県の委員会では「事故との因果関係について考えにくい」としています。
甲状腺がん以外の疾病については、きちんと把握されていません。
健診の内容・範囲を充実させ、医療費の減免のための立法措置が必要です。下表は、2016年2月15日、福島県県民健康調査委員会において発表された、福島県の子どもたちの甲状腺がんの状況です。甲状腺がん悪性または疑いと診断された子どもたちの数は、1巡目2巡目合わせて166人。2014年から始まった2巡目検査で甲状腺がんまたは疑いとされた子どもたちは51人。この中には、1巡目の検査で、問題なしとされた子どもたち47人が含まれています。
2015年8月31日、手術を受けた子どもたち96人の症例について、福島県立医大の鈴木眞一教授によるペーパーが公開され、リンパ節転移が72例にのぼること、リンパ節転移、甲状腺外浸潤、遠隔転移などのいずれかに該当する症例が92%にのぼることが明らかになりました。
日本全国の19歳以下の甲状腺がんの発生率は10万人中約0.37人とされています。
現在、福島の子どもたちの甲状腺がんの率は、10万人中38人以上です。
検査を積極的に実施することにより、病気が前倒しで発見されることにより通常より多くみつかる効果を「スクリーニング効果」といいます。しかし、これを考慮しても、「多発」であると、疫学の専門家たちが認めているのです。
福島県県民健康調査委員会の甲状腺評価部会は「わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い」とする中間取りまとめを発表しました。
政府や福島県委員会は、「福島原発事故はチェルノブイリ原発事故よりも被ばく量が少ない」として、健康影響が生じることを否定しています。しかし、これは本当でしょうか。
当然のことながら、地域ごとに被ばく量は異なり、チェルノブイリで汚染地域とされて、医療・健診などさまざまな対策が行われた地域と同等レベルの汚染がみられる地域は、福島県内外に存在します。
また、「閾値なしの線形モデル」の原則にたてば、低線量だからといって健康影響が生じないわけではありません。現に、チェルノブイリ原発事故後の甲状腺がんは、被ばく量の比較的少ない人たちからも発症しています(下図)。出典: トロンコ所長らの論 文を もとに OurPlanetTV が作成
Tronko Ph.D et at Thyroid carcinoma in children and adolescents in ukraine after the Chernobyl nuclear accident
→請願項目3.福島県内外における健診の充実・拡大と医療費の減免を求めます。このため「原発事故子ども・被災者支援法」第13条第2項第3項の具体化のための立法措置を求めます。
以上、FoE JAPAN サイトより引用 国際環境NGO FoE Japan