報告:「原発事故子ども・被災者支援法」学習会@防府ルルサス

 遅くなりましたが、11月29日(土)ルルサス防府防府市)にて開催された「原発事故子ども・被災者支援法」(以下、「支援法」)学習会の報告です。

 講師の石森雄一郎弁護士ご自身、原発事故当時福島市に暮らしておられ、事故直後にご家族を県外に避難させ、その後ご家族に合流され広島県に移住。避難者として感じた不安や苦悩、故郷を思う気持ちなど率直に語られました。

 福島第一原子力発電所の重大事故による被災者の健康不安の解消と安定した生活の実現を目指し、2012年6月に全会一致の議員立法により「支援法」が成立しました。 「支援法」の特徴は次の通りです。  
1)放射性物質の人の健康に及ぼす危険について科学的に解明されていないことなど  から安全とは言い切れないとしている。
2)だからこそ、被災者自らが居住、避難、帰還を選択する意思が尊重され、それぞれの選択について適切な支援がなされる。
3)支援対象地域の設定は、放射線量が基準とされる。「福島」という地域ではなく「人」に着目している。
4)基本的な理念と抽象的な政策しか書かれていないプログラム法であり、具体的な政策は政府が定める。

 


 避難者のためにどういう施策が作られるべきか、支援法9条には次の項目が掲げられています。
1)支援対象地域からの移動の支援
2)移動先における住宅確保
3)子どもの移動先における学習支援
4)移動先の就業支援
5)移動先の地方公共団体の薬務提供を円滑に受けるような支援
6)支援対象地域の地方公共団体との関係維持
7)家族と離れて暮らすことになった子どもに対する支援  
また、13条には医療健康面で被ばく線量の推計、健康診断、医療費の減免なども掲げられています。  
 法案成立後、1年4カ月後にようやく基本方針が策定されましたが、支援法14条に「施策の具体的な内容に被災者の意思を反映し…」とあるにもかかわらず、パブリックコメントなどで被災者、避難者の声を聞くことはほとんどありませんでした。しかも策定された基本方針は、支援対象地域を福島県の「中通り」と「浜通り」のみに限定したものでした。これは2011年に東京電力の損害賠償指針にある「自主的避難区域」にほぼ一致するもので、放射線量に着目したものではありません。避難者を対象とした施策として公営住宅への入居措置、母子避難者に対する高速料金無料措置が盛りこまれましたが、内容的に目新しい政策はなく、マザーズ・ハローワークの充実など被災者支援とは関連づけがしにくい施策も含まれていました。(注1) 

 放射線の影響は目に見えませんし、直ちに影響が出ません。そのため報道する側のマスコミにも何が被害なのかわからない人がいます。避難者自身が事故後3年半以上たって疲れ切っており、原発事故に対する国民的関心が急速に薄れつつあるなか、具体的政策をさらに充実させるために私たち被災者はどうしたらよいのでしょうか。  水俣病やカネミ訴訟など日本の他の公害と比べても、今回の原発事故による被害は甚大で広範囲、しかも被害が不確実で、被害者自身が被害の本質を対外的に表現しづらいという特殊性があります。被害をわかってもらえないと相手を非難するだけではなく、被災者自身が当事者として情報発信の内容やその在り方を工夫する必要もあります。そうでないと原発事故のことを後世に伝えられなくなってしまいます。自分たちの被害、不安感は何かを各自が言い表し、、語り伝えること、それが重要になってきます。  

(注1)紹介は別の機会に譲りますが、支援法が骨抜きにされてしまった経緯は『福島原発事故 被災者支援法の欺瞞』日野行介(岩波新書)に詳しいです。機会があればぜひお読みください。